B 演奏について
HOW TO PLAY

B9 カンテレの演奏

(入門編)

このページはtoi様からのご好意により頂きました資料を基に制作したものです。

カンテレをより知りたい方はこちらをご覧になってください。


カンテレ・ミニレッスン

カンテレには非常に多くの種類がありますので、演奏法もそれぞれ個性的です 。

1.演奏の姿勢

エレキカンテレなどは、ストラップをつけて立っての演奏なども見かけますが、本来は膝の上もしくは机の上で演奏します。

その際に自分に対して横向きに置きます。丁度この見出しの写真のようです。


カンテレは弦が短い方が高音となり、長い方が低音となります。

他の楽器ではあまり考えられないことですが、カンテレは高音側を手前にする場合と低音側を手前にする場合があります。これは、カンテレの歴史を振り返ると分かります。

どちら側から弾くかをまず決めます。(両方やってみてゆっくり決めても可です。)

お琴やハープをやっている人は高音弦を手前にした方が馴染み易いでしょう。

伝統を重んじる人も、高音弦を手前にしてみると良いと思います。

フィンランドの学校教育では5弦、10弦はこの方法で教わります。


将来多弦カンテレ(20弦以上)をという人は、両方できるようにした方がいいと思います。

大型のカンテレの場合には低音を手前側にするのが一般的です。

2. 調声  

5弦の基本はG長調とg短調です。短調にする場合は、第3弦を半音下げます。 階名では低音からドレミファソラシドレミとなります。


10弦の基本はG長調/e短調です。

(チューニングを変えてDからGの間で自由にしていいと思います。)

本来、各弦を音階名でドとかレとかで呼びますが、カンテレの場合にはいろいろな弦数もあるので、それらに対応するには、弦番号で弾く方法があります。 弦の呼び名は低音から1、2と数えていきます。

チューニングを変えている場合には、本来の音程での演奏ではなくなりますが、このように弦番号で演奏したり、本来の楽譜で弾くべき弦をはじいていけばそのまま演奏はできます。

例として10弦の場合、低音から、階名でソラシドレミファソラドとなります。5弦と短調の曲で合奏する場合は2弦、3弦、6弦、9弦を半音下げて(g短調)、ミファソラシドレミファラとします。※注1


 

多弦(21弦〜36弦)の場合は、ダイアトニックで設定されています(通常C-C、F-Fな どの音域で設定)。

調を変える場合は、半音操作レバーで変えます。この場合、通常 はC/Am、F/Dm、G/Emに対応できます。それ以外の調は、予め、糸巻きペグで調製して おきます。

半音操作レバーのない場合も同様です。半音操作レバーがないと、臨時記 号には対応できません。

これらの楽器で演奏するためには、楽曲をC/Amに転調する必 要が出てきます。

また、他の楽器との合奏は多少の不便があります。


38弦、39弦(通常コンサート・カンテレとよばれている)は、各音単位に、5オクター ブ一緒に半音操作(ダブルアクション)する機構がついているので、全調に対応でき ます。価格の高いのが難点です。

 

※1 「5弦と短調の曲で合奏する」の意味は、5弦と10弦で長調の曲を合奏するときは、両方G長調なので問題はないのですが、短調の曲を合奏するときは5弦はg短調、10弦はe短調となります。合わせるためには10弦の方を調整する必要が出てきます。第4弦のGをラとする音階にすることになります。

3. 指の基本位置

指の呼び名は、ピアノと同じで左右とも親指から1〜4です。小指は使いません。

指の基本位置は下記の表のようにいろいろな指使いがありますので、戸惑うかもしれません。

まず、5弦と10弦は、当然のごとく配置が違います。

基本と思われる奏法の指使いは例1に書いてありますが、曲想によって指を変えたりする場合もあるようです。

したがって、基本としてこれらの指使いをある程度マスターした後であれば、後は弾きやすさによって自由に変えるのも良いようです。

 

5弦カンテレ
弦番号
音名
階名
指 例1
指 例2
1
G
右3指
右2指
2
A
左3指
左4指
3
H
右2指
左3指
4
C
ファ
左2指
左2指
5
D
右1指
右1指

左1指は弦を 弾いたときに楽器が動かないように押さえる為に使います。

 

10弦カンテレ
弦番号
音名
階名
指 例1
指 例2
指 例3
指 例4
1
D
右3指
右3指
右4指
右4指
2
E
右3指
右2指
右4指
右3指
3
F
右2指
右2指
右3指
右2指
4
G
右2指
右2指
右2指
右2指
5
A
左4指
左4指
左4指
左3指
6
H
左3指
左3指
左3指
右2指
7
C
ファ
左2指
左2指
左2指
左2指
8
D
右1指
右1指
右1指
右1指
9
E
右1指
右1指
右1指
右1指
10
G
右1指
右1指
右1指
右1指

 


5弦と10弦については上記のような指の配置表を書きましたが、多弦の場合はさらに異なります。

普通、多弦では、ピアノのように、メロディーを右手で、和音を左手で弾く方法が多いようです。しかしながら、5弦や10弦での指の運びを習得した人であれば、多弦での演奏もさほど迷わず練習できるようになることでしょう。

4. 弦の弾き方

弦の弾き方は、普通にはじく場合と、弾いた後に次の弦で止める方法があり、両方できるようにすると良いです。

本来爪は使いません。

曲想にあわせて強弱をつけられるように練習が必要です。

5、弦の消音

残響が大きく長いのがカンテレの特徴ですが、前の音が残って次の音に重なってしまうので、消音 も大切なテクニックの一つとされています。

5弦、10弦では、ギターと同じように、小指側の掌で弦を押さえて消音します。

多弦では、多くの場合、ミュート板がついているので、適宜空いている方の掌でミュー ト板を押さえます。 また、多弦では、1音ずつ、弾いた後で、隣の指でその弦に触れて消音するのが初期 テクニックとして要求されます。

多弦では、低音を手前にして弾きますが、上行スケー ルの場合、次の弦に指をあてて止める弾き方で弾くと自動的に前の音は消えます。

その意味で、次の弦に指をあてて止める奏法は重要となります。

下行スケールの場合は、ある音を弾いて、その次の音を弾い た時に、前の音を消すという方法をとります。

慣れるまで大変なので、練習が必要です。

 

6、コード演奏
コード奏法について

やはり、カンテレの場合に非常に特徴的な奏法として、コード奏法があります。

アコースティックギターのように、伴奏をコードで弾く楽器は意外にも少ないのではないでしょうか?

最近では、ストラップやピックアップを付けて、ロックやフォークでカンテレを使うプレイヤーも増えているようです。

 

5弦の場合 不要な弦を左指で軽く押さえて、右2指で上行または下行でジャンとかジャジャンと弾きます。

つまり押さえた弦は、鳴らないようにミュート(消音)してしまい、押さえられていない弦の音を鳴らすことになります。

 

長調

弦番号
音名
階名
和音 I
和音 IV
和音 V
1
G
× 左4指
2
A
× 左3指
× 左4指
3
H
× 左3指
× 左3指
4
C
ファ
× 左2指
× 左2指(7)
5
D
× 左2指
× 左指で押さえる弦 ○弾く弦 (7) 7thのとき押さえない弦 ※2 

 

短調  
弦番号
音名
階名
和音 VI
和音 II
和音 III
1
G
× 左4指
2
A
× 左3指
× 左4指
3
× 左3指
× 左3指
4
C
× 左2指
× 左2指(7)
5
D
× 左2指

× 左指で押さえる弦 ○ 弾く弦  (7) 7thのとき押さえない弦 ※2 


10弦の場合はさらに表は大きくなります。押さえる指は5本になりますので、練習が必要です。

 

10弦の場合 
 
弦番号
音名
階名
和音 I
G
和音 IV
C
和音 V
D
和音 VI
Em
和音 II
Am
和音 III
H(m)
1
D
× 左5
× 左5
× 左5
※3
2
E
× 左5
× 左5
× 左5
3
F#
× 左4
× 左4
× 左4
× 左4
4
G
× 左4
× 左3
× 左4
5
A
× 左3
× 左3
× 左3
× 左3(7)
6
H
× 左2
× 左3
× 左2
7
C
ファ
× 左2
× 左2(7)
× 左2
× 左2
8
D
× 左1
× 左1
× 左1
※3
9
E
× 左1
× 左1
× 左1
10
G

× 左指で押さえる弦 ○ 鳴る弦 (7) 7thのとき押さえない弦  ※2       
  は、弾かない弦

 

一見ややこしく感じますが、初心者の方は楽器の響板の上に、自分なりにわかりやすく書いた紙を作って貼ってみると良いと思います。    

 

※2 カンテレの教本などでは、消音する弦に○をつけているものもあるのでこの表とは反対ですから、注意が必要です。

※3 Hを弾く時には、このマークの付いた弦は弾きません。Hmの時には弾きます。    

歴史的背景

カンテレの起原とされているカレリア地方を中心として、リトアニア、ラトヴィア、エストニア、スロベニアや、フィンランドのロシアカレリア寄りの地方、オストロ・ボスニア地方(ボスニア海東岸)では高音を手前にする奏法が多く残っています。

学校教育に導入されている5弦や10弦はこの伝統奏法で教育されていますが、シベリウス音楽アカデミーのような高等音楽教育の場での大形楽器では、低音を手前にした奏法が主流となっているようです。

これは、和音奏法への適性と、楽譜への適性という意味で、合理的な奏法と言えるようです。

これから、この楽器をやってみようという場合は悩むところです。因に、100年前の演奏写真は、殆ど高音を手前にしています。日本の演奏家は大形では全て低音が手前です。

 

 
 

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